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組換えアデノウイルスの話し


組換えアデノウイルスの話し (1)

■ RIKEN DNA Bankの特徴の一つは、豊富な組換えアデノウイルスの資材、即ち組換えアデノウイルスならびに組換えアデノウイルス作製用シャトルベクターです。組換えウイルスデータベースならびにDNA Bank web catalog を利用して、組換えウイルスの構築のために用いたクローンをたどることも出来ます。組換えアデノウイルスを販売する会社も少しずつ増えてきましたが、RIKEN DNA Bankのように 様々な遺伝子の組換えアデノウイルスとその関連材料を扱っているバンクは他にありません。 (シャトルベクターの参考記事)
■ RIKEN DNA Bankでは組換えアデノウイルス作製法として、COS-TPC法とクローン化ゲノム導入法を採用しています。
■ 旧来法のCOS-TPC 法は、2種類のDNA を宿主細胞であるHEK293 細胞に導入して組換えアデノウイルスを得ます。ひとつはウイルスゲノムのほぼ全長を持ったコスミドベクターで、E1 領域を欠失しています。もうひとつはEcoT22I (+ClaI) により制限酵素消化した末端タンパク付きAd5-dlx ゲノム (DNA‐TPC)で、E1領域は制限酵素処理で切断されていることが期待されます。この2種類のDNA がHEK293細胞に導入されると、細胞内相同組換えにより目的の発現ユニットを搭載した組換えアデノウイルスが産生されます。ここでの問題点は、DNA-TPC の制限酵素処理が不十分だと、DNA-TPC 由来のウイルス初期遺伝子E1A とE1B を持った自律増殖可能なアデノウイルス (RCA; Replication Competent Adenovirus) が生成してきてしまうことです。RCA の分離には非常に手間がかかりますし、かりに検出限界以下でも混入していたとしたら2ないし3世代後にはほとんどがRCA positive となってしまい、目的の組換えアデノウイルスを分離することが出来なくなってしまいます。
■ そこで、作業の効率化、簡便化を目的としてウイルス作製にDNA‐TPCを用いる必要のない完全長ウイルスゲノムを持ったitベクター (intact termini vector)が開発されました。このit ベクターにはヒトアデノウイルス5型ゲノムがクローニングされていますが、E1 領域は欠損しています。従って、it (intact termini)ベクター(pAxcwit、pAxCAwtit)を用いた組換えアデノウイルス作製ではRCAが出現しにくいということは理論的に考えて当然のことです。仮にRCA が生成するとすれば、ウイルス増殖宿主のHEK293細胞がゲノムに持つE1遺伝子をウイルスが増殖過程で組換えにより獲得する場合です。この現象は極めて低い確率でしか起こらず、細胞の継代回数、ウイルスの継代回数に気をつけていればほとんど起こらないと考えられます。通常、皆様が実験にお使いになるウイルスの継代回数では全く問題がないと思われます。では、本当にそうなのか?データとして発表されていませんので今回改めて検証実験を行いました。
■ 異なるコスミド株からクローン化ゲノム導入法によって作製したGFP 発現アデノウイルス (AxCAEGFPit) 3株について、3rd seedから13th seedまでを6cmディッシュのHEK293細胞にて継代しました。これらのウイルスにRCA が発生しているかを検査しました。作製した組換えウイルスをHeLa 細胞に感染して得たcell pack よりウイルスDNA を抽出しました。E1A ならびにE1B を検出できるよう設計したプライマーセットを用いてPCR によりRCA の検出を試みました。その結果、3株ともに13代まではRCA は検出されませんでした。また、細胞観察でも13代までEGFP の発現は高いレベルに保たれており、安定していました。(検査手法の参考記事: 「挿入遺伝子とRCAの確認 [link]」ならびに「組換えアデノウイルス作製マニュアル ~クローン化ゲノム導入法~ [PDF]」)
■  今回使用した組換えアデノウイルス作製用it ベクターはコスミドベースのクローンであり、取扱いにコツが必要です。あまり長い時間大腸菌を培養すると発現ユニットが落ちてしまったり、操作中や保存中の状態によってはDNA が切れてしまったりすることもあります。しかし、一度ウイルスになればDNA に変異が入ったものは増えず、RCAも出現確率は非常に低く、目的ウイルスのウイルスの増殖が保たれやすいため、扱いやすいのではないかと思います。
■  当バンクではitベクターやその改良版であるit2ベクターを用いて重要cDNA搭載組換えアデノウイルスを作製し、提供していく予定です。 (M.T. & T.M.)
(Mail News 2006.06.30 掲載記事より)

組換えアデノウイルスの話し (2)

■ 組換えアデノウイルスを使えば、高い遺伝子導入効率が期待できる。学会やセミナーなどでユーザーの皆さんとお話しすると、そう期待されているお話を多く聞きます。確かに、遺伝子導入効率の悪いマウス初代培養細胞 (MEF) の場合は、我々が行った実験で絵は遺伝子導入効率が上がりました。
■ しかし、高い遺伝子導入効率が期待できるのは、全ての細胞ではありません。細胞によって遺伝子導入効率はまちまちです。組換えアデノウイルスに使われているヒト5型アデノウイルスは、コクサッキーウイルスアデノウイルス受容体 (CAR) を介して細胞に導入されます。そこで、CAR の発現が少ない細胞では組換えアデノウイルスは取り込まれにくくなっています。また、血球系細胞には入りにくいと言われています。
組換えアデノウイルスに関する参考資料
■ 最近のCancer Gene Therapy の目次を見ても、アデノウイルスの特定の細胞への感染効率を上げる努力が続いています。言い換えれば、これらの論文に出てくる細胞を使う予定の方は、遺伝子導入効率があまり高くないことを覚悟しなければいけません。

  • Z. Ye et al., Engineered CD8+ cytotoxic T cells with fiber-modified adenovirus-mediated TNF- gene transfection counteract immunosuppressive interleukin-10-secreting lung metastasis and solid tumors. Cancer Gene Ther 14: 661-675, 2007.
  • K. Rittner et al., Targeting of adenovirus vectors carrying a tumor cell-specific peptide: in vitro and in vivo studies. Cancer Gene Ther 14: 509-518, 2007.
  • M. K. Magnusson et al., Adenovirus 5 vector genetically re-targeted by an Affibody molecule with specificity for tumor antigen HER2/neu. Cancer Gene Ther 14: 468-479, 2007.
  • M. Stevenson et al., Incorporation of a laminin-derived peptide (SIKVAV) on polymer-modified adenovirus permits tumor-specific targeting via 6-integrins. Cancer Gene Ther 14: 335-345, 2007.
  • E. Brouwer et al., Human adenovirus type 35 vector for gene therapy of brain cancer: improved transduction and bypass of pre-existing anti-vector immunity in cancer patients. Cancer Gene Ther 14: 211-219, 2007.
  • S. Ni et al., Evaluation of adenovirus vectors containing serotype 35 fibers for tumor targeting. Cancer Gene Ther 13: 1072-1081, 2006.
  • W. A. Marsman et al., Gene therapy for barrett’s esophagus: adenoviral gene transfer in different intestinal models. Cancer Gene Ther 12: 778-786, 2005.
  • Y. Okada et al., Transcriptional targeting of RGD fiber-mutant adenovirus vectors can improve the safety of suicide gene therapy for murine melanoma. Cancer Gene Ther 12: 608-616, 2005.
  • A. V. Borovjagin et al., Complex mosaicism is a novel approach to infectivity enhancement of adenovirus type 5-based vectors. Cancer Gene Ther 12: 475-486, 2005.
  • B. O. Engesater et al., PCI-enhanced adenoviral transduction employs the known uptake mechanism of adenoviral particles. Cancer Gene Ther 12: 439-448, 2005.

■ 遺伝子材料開発室では、組換えアデノウイルスに関する特性情報の収集に努め、組換えアデノウイルスを効果的に使うための情報を蓄積しています。計画されている組換えアデノウイルス実験が目的の細胞に合った手法かどうか、迷ったときにはDNAバンクまで電子メールでご相談ください。(T.M.)
(Mail News 2007.11.01 掲載記事より)