- (1) プラスミド並びにコスミドクローン
- (2) ゲノムライブラリーのBAC、YAC、 P1、フォスミド, コスミドの各クローン
- (3) 組換えアデノウイルス
- (4) 宿主微生物
- (5) cDNAライブラリー
- (6) DNAクローンセット
- (7) 微生物ゲノムDNA
- (8) マウスゲノムDNA
- (1) プラスミド並びにコスミドクローン
- (2) ゲノムライブラリーのBAC、YAC、 P1、フォスミド, コスミドの各クローン
- (3) 組換えアデノウイルス
- (4) 宿主微生物
- (5) cDNAライブラリー
- (6) DNAクローンセット
提供時の品質管理
実験の再現性を確保するため、それぞれの遺伝子材料に応じて、寄託者から提供された情報に基づいて、必要な検査を行っています。
下記、遺伝子材料の品質検査の実施項目、未実施項目および追加実施項目をご確認ください。
利用者の皆様には、受入れ後本格的に利用する前のなるべく早い時期にバイオリソースの品質、特性についてご確認ください。少しでも不具合や疑義がありましたら、速やかに対応させていただきますので、是非、ご連絡(dnabank.brc@riken.jp宛)をお願いいたします。利用者の皆様からのフィードバックがリソースの質の向上に必要不可欠です。
(1)プラスミド並びにコスミドクローン
プラスミド並びにコスミドクローンは、TEバッファに溶解したDNA溶液として室温で送付します。お送りするDNAは、宿主バクテリアを形質転換し、培養を行い増幅しています。
寄託者および開発者が実施した塩基配列、タンパク質発現等の検査結果の情報は、カタログデータに記載します。
寄託者から提供されたリソース情報を基に、下記の品質検査を実施:
- 実施項目:
- 寄託者により指定された培養条件下での組換え体の増殖能と薬剤耐性
- 抽出DNAの電気泳動による制限酵素切断パターン
- 挿入遺伝子末端ならびにベクターの主要部分の塩基配列もしくは、HTS (High throughput sequence)による全長配列解析
- 未実施項目:
- 発現クローン及びレポータークローンのタンパク質発現検査等
- 追加実施項目:
- 上記の未実施項目及びその他の項目の検査を実施したリソースについては、検査結果をカタログデータに記載
(2)ゲノムライブラリーのBAC, YAC, P1, フォスミド, コスミドの各クローン
ゲノムライブラリーのBAC、 YAC、P1、フォスミド, コスミドの各クローンは、寒天培地に穿刺培養(agar-stab)した組換え体として、室温で送付します。
寄託者および開発者が実施した塩基配列等の検査結果の情報は、カタログデータに記載します。
寄託者から提供されたリソース情報を基に、下記の品質検査を実施:
- 実施項目:
- 寄託者により指定された培養条件下での組換え体の増殖能と薬剤耐性
- DNA配列データベースに登録された挿入断片の末端配列情報を検出するPCR
- 未実施項目:
- クローンの制限酵素切断パターン
- クローンの挿入遺伝子全長及び末端の塩基配列等
- 追加実施項目:
- 上記の未実施項目及びその他の項目の検査を実施したリソースについては、検査結果をカタログデータに記載。
(3) 組換えアデノウイルス
組換えアデノウイルスは、HEK293細胞に感染させ、増殖させます。感染細胞の破砕液を送付します。
寄託者および開発者が実施した塩基配列、タンパク質発現等の検査結果の情報は、カタログデータに記載します。
寄託者から提供されたリソース情報を基に、下記の品質検査を実施:
- 実施項目:
- ウイルスDNAの電気泳動による制限酵素切断パターン
- 自律増殖可能アデノウイルス(RCA)が検出限界以下であることを確認するためのE1領域のPCR
- 挿入遺伝子末端ならびにベクターの主要部分の塩基配列
- 未実施項目:
- ウイルス全長の塩基配列
- タンパク質発現等
- 追加実施項目:
- 上記の未実施項目及びその他の項目の検査を実施したリソースについては、検査結果をカタログデータに記載。
(4) 宿主微生物
宿主微生物は、指定された寒天培地に穿刺培養(agar-stab)して、室温で送付します。
寄託者および開発者が実施した栄養要求性等の検査結果の情報は、カタログデータに記載します。
寄託者から提供されたリソース情報を基に、下記の品質検査を実施:
- 実施項目:
- 寄託者により指定された培養条件下での宿主微生物の栄養要求性、増殖能、薬剤耐性
- 未実施項目:
- 遺伝子型等
- 追加実施項目:
- 上記の未実施項目及びその他の項目の検査を実施したリソースについては、検査結果をカタログデータに記載。
(5) cDNAライブラリー
cDNAライブラリーは、一度、増幅させます。
寄託者および開発者が実施した独立クローン数、インサートサイズの範囲と平均等の検査結果の情報は、カタログデータに記載します。
寄託者から提供されたリソース情報を基に、下記の品質検査を実施:
- 実施項目:
- 寄託者により指定された培養条件下での組換え体の増殖能と薬剤耐性
- 未実施項目:
- 独立クローン数
- インサートサイズの範囲と平均等
- 追加実施項目:
- 上記の未実施項目及びその他の項目の検査を実施したリソースについては、検査結果をカタログデータに記載。
(6) DNAクローンセット
寄託されたセットから、保存用レプリカ(寄託されたセットの最初のコピー)を作製し、提供用クローンセットは、保存用レプリカをそのまま複製します。
寄託者および開発者が実施した塩基配列、タンパク質発現等の検査結果の情報は、カタログデータに記載します。
寄託者から提供されたリソース情報を基に、下記の品質検査を実施:
- 実施項目:
- 寄託者により指定された培養条件下での組換え体の増殖能と薬剤耐性
- 無作為に選んだクローンから抽出したDNAの電気泳動による制限酵素切断パターン
- 無作為に選んだクローンの挿入遺伝子末端の塩基配列
- 未実施項目:
- セット全体のクローンの制限酵素切断パターン
- セット全体のクローンの挿入遺伝子全長及び末端の塩基配列
- 発現クローンのタンパク質発現検査等
- 追加実施項目:
- 上記の未実施項目及びその他の項目の検査を実施したリソースについては、検査結果をカタログデータに記載。
(7) 微生物ゲノムDNA
微生物ゲノムDNA抽出用の微生物株は、微生物材料開発室(JCM)で培養し、集菌します。
遺伝子材料開発室では、培養ロット毎にゲノムDNAを抽出します。
寄託者および開発者が実施した塩基配列等の検査結果の情報は、カタログデータに記載します。
寄託者から提供されたリソース情報を基に、下記の品質検査を実施:
- 実施項目:
- 吸光度によるDNA濃度 (A260)と純度 (A260/A280)
- アガロースゲル電気泳動像よるDNA濃度と断片化の有無
- PCRによる、16S rRNA遺伝子領域の増幅
- 16S rRNA遺伝子領域の塩基配列
- 未実施項目:
- 株特徴的な遺伝子塩基配列等
- 追加実施項目:
- 上記の未実施項目及びその他の項目の検査を実施したリソースについては、検査結果をカタログデータに記載。
(8) マウスゲノムDNA
ゲノムDNA抽出用のマウスは、実験動物開発室が維持しています。
遺伝子材料開発室では、個体ロット毎にゲノムDNAを抽出します。
寄託者および開発者が実施した検査結果の情報は、カタログデータに記載します。
寄託者から提供されたリソース情報を基に、下記の品質検査を実施:
- 実施項目:
- 吸光度によるDNA濃度 (A260)と純度 (A260/A280)
- アガロースゲル電気泳動像よるDNA濃度と断片化の有無
- 未実施項目:
- 遺伝子マーカーによる系統の遺伝背景等
- 追加実施項目:
- 上記の未実施項目及びその他の項目の検査を実施したリソースについては、検査結果をカタログデータに記載。
寄託時の品質管理
遺伝子材料開発室では、寄託者から提供された情報に基づいて品質検査を実施します。リソース情報ならびに関連論文の情報は、ウェブカタログに掲載します。
寄託者には、実験の再現性を確保するため、導入遺伝子増幅時のプライマー情報、変異導入の有無、タンパク質発現確認の有無、関連論文など、知りうる限りの正確な情報の提供をお願いします。当室では、情報提供のためのお手伝いをいたします。ご連絡ください。当室での検査の結果が提供いただいた情報と異なっていた場合は、その結果をお知らせするとともに、遺伝子材料の再送または情報の修正や追加情報の提供をお願いする場合があります。
寄託される先生方へ
理研バイオリソースセンター・遺伝子材料開発室の事業は、研究者から寄託された遺伝子材料とその付随情報から成り立っています。寄託者の皆様に深く感謝申し上げます。
さて、遺伝子材料に変異や汚染が発生することは容易に想像できることであり、また実験系や知的財産権の高度化・複雑化に伴いリソースに関する正確な情報の把握が困難になってきています。しかし、これらが原因で、ご厚意でリソースを寄託した研究者が、利用者や第三者からの係争に巻き込まれることがあってはならないことであり、利用者が同意する必要がある生物遺伝資源提供同意書に、寄託者に対する免責文言を加えました。このように法的環境を整備しましたので、積極的な寄託をお願い申し上げます。
(1) プラスミド並びにコスミドクローン
プラスミド並びにコスミドクローンは、DNAをお送りいただいた場合は寄託者が指定した宿主バクテリアを形質転換し、組換え体をお送りいただいた場合はそのまま、寒天培地で培養します。単一コロニーを培養し、DNAを抽出します。抽出DNAを用い、寄託者から提供されたリソース情報を基に、品質検査を実施します。寄託時のプロトコールに塩基配列解析が含まれない場合、寄託者から提供された情報に基づいて配列確認のためのプライマーをバイオリソースセンターにて設定、塩基配列の確認を行います。検査を合格したクローンのグリセロールストックを3本作製し、凍結保存します。
寄託者および開発者が実施した塩基配列、タンパク質発現等の検査結果の情報は、カタログデータに記載します。
寄託者から提供されたリソース情報を基に、下記の品質検査を実施:
- 実施項目:
- 寄託者により指定された培養条件下での組換え体の増殖能と薬剤耐性
- 抽出DNAの電気泳動による制限酵素切断パターン
- 挿入遺伝子末端ならびにベクターの主要部分の塩基配列
(2) ゲノムライブラリーのBAC, YAC, P1, フォスミド, コスミドの各クローン
ゲノムライブラリーのクローンは、寄託者により指定された培養条件下で組換え体を培養し、寄託者から提供されたリソース情報を基に品質検査を実施します。検査を合格したクローンのグリセロールストックを2コピー作製し、凍結保存します。
寄託者および開発者が実施した塩基配列等の検査結果の情報は、カタログデータに記載します。
寄託者から提供されたリソース情報を基に、下記の品質検査を実施:
- 実施項目:
- 寄託者により指定された培養条件下での組換え体の増殖能と薬剤耐性
(3) 組換えアデノウイルス
組換えアデノウイルスは、HEK293細胞に感染させ、増殖させます。106-8 pfu/mlの感染力価が得られるまで概ね4から5回の感染を繰り返します。ウイルスはHEK293細胞並びにHeLa細胞に感染させ、それぞれウイルスDNAを抽出します。抽出したDNAを用い、寄託者から提供されたリソース情報を基に、品質検査を実施します。検査を合格したウイルス液を提供用ウイルス液として保存します。
寄託者および開発者が実施した塩基配列、タンパク質発現等の検査結果の情報は、カタログデータに記載します。
寄託時のプロトコールに塩基配列解析が含まれない場合、寄託者から提供された情報に基づいて配列確認のためのプライマーをバイオリソースセンターにて設定、塩基配列の確認を行います。
寄託者から提供されたリソース情報を基に、下記の品質検査を実施:
- 実施項目:
- ウイルスDNAの電気泳動による制限酵素切断パターン
- 自律増殖可能アデノウイルス(RCA)が検出限界以下であることを確認するためのE1領域のPCR
- 挿入遺伝子末端ならびにベクターの主要部分の塩基配列
(4) 宿主微生物
宿主微生物は、寄託者により指定された培養条件下で培養し、増殖させます。寄託者から提供されたリソース情報を基に、品質検査を合わせて実施します。グリセロールストックを3本作製し、凍結保存します。
寄託者および開発者が実施した栄養要求性等の検査結果の情報は、カタログデータに記載します。
寄託者から提供されたリソース情報を基に、下記の品質検査を実施:
- 実施項目:
- 寄託者により指定された培養条件下での宿主微生物の栄養要求性、増殖能、薬剤耐性
(5) cDNAライブラリー
cDNAライブラリーは、寄託者および開発者が指定した培養条件下で、培養し、増幅させ、保存します。
寄託者および開発者が実施した独立クローン数、インサートサイズの範囲と平均等の検査結果の情報は、カタログデータに記載します。
寄託者から提供されたリソース情報を基に、下記の品質検査を実施:
- 実施項目:
- 寄託者により指定された培養条件下での組換え体の増殖能と薬剤耐性
(6) DNAクローンセット
寄託されたセットから、保存用レプリカ(寄託されたセットの最初のコピー)を作製し、凍結保存します。作製した保存用レプリカから無作為に4クローンを選び、DNAを抽出します。抽出したDNAを用い、寄託者から提供されたリソース情報を基に、品質検査を実施します。
寄託者および開発者が実施した塩基配列、タンパク質発現等の検査結果の情報は、カタログデータに記載します。
寄託時のプロトコールに塩基配列解析が含まれない場合、寄託者から提供された情報に基づいて配列確認のためのプライマーをバイオリソースセンターにて設定、塩基配列の確認を行います。
寄託者から提供されたリソース情報を基に、下記の品質検査を実施:
- 実施項目:
- 寄託者により指定された培養条件下での組換え体の増殖能と薬剤耐性
- 無作為に選んだクローンから抽出したDNAの電気泳動による制限酵素切断パターン
- 無作為に選んだクローンの挿入遺伝子末端の塩基配列
ハイスループットシーケンシング (HTS)
RIKEN BRC DNA Bankでは、2023年4月から、ハイスループットシーケンシング (HTS) を使用して、寄託されたプラスミドの配列を決定しています。DNA Bankでは、Illumina社の short-readシークエンシング、Oxford Nanopore Technologies社のlong-read シークエンシング、必要であればSanger シークエンシングを用いて、プラスミド配列を解析し、プラスミドの全長配列をアセンブルしています。HTS解析よって得られたプラスミド配列は、SnapGeneソフトウェアを用いて分析し、インサート、必須バックボーンエレメント、DNA配列データベースに登録された配列との差異 (例:不一致、欠失、挿入など)、およびタグまたは融合タンパク質のフレームを含む重要なプラスミドエレメントの同一性を検証するほか、寄託者から提供された全長あるいは部分配列との整合性を確認しています。
QCテストの一環として、クローニングデータまたは寄託された配列と私たちのHTSの結果との間に不一致がある場合 、DNA Bankは寄託者に連絡し、プラスミド利用における整合性の確認もしています。QCテストが済んだHTS解析によるプラスミド配列データは、各プラスミドのカタログページにてオンラインで公開します。
DNA Bankから受け取ったプラスミドを確認した際、私たちが提供する配列と比較して配列の不一致を確認した場合は、私たちに報告してください。問題を解決するために喜んで支援いたします。
(2015.01.31)
2024.10.01