technicalnotes04

大腸菌コンピテントセル

■ 大腸菌形質転換用コンピテントセルを自作する場合のプロトコールです。研究室や人によって作り方は多少違うようで、ある研究室ではすべての操作を低温室で行うよう教わりました。ここで紹介するのは、私がDNA Bank に来て習った方法です。すべての操作は室温で行って構いません。ただし試薬は冷やしたものを使い、遠心機は4℃ に設定してください。効率は10^5~10^6 cfu / ug と高いものとは言えませんが、短時間で簡単に作れる方法です。高い効率が必要なクローニングやライブラリー作製の用途には向いていませんが、精製したプラスミドを再び増幅する場合やタンパク質発現用の形質転換大腸菌の準備に使用するなら、全く問題ありません。
■ 以下に手順をお示しします。用いる器具は適宜オートクレーブをかけ、試薬はオートクレーブ、またはフィルターにより滅菌しておきます。

1日目:4mL の培養液に植菌
2日目:上で準備した4 mL の一晩培養菌を400mL の LB 培地に植える
37℃でOD600が0.9くらいまで培養(1.0までは上がらないように)
200 mL ×2本 に分けて集菌

<以下の操作は分割した1本ずつについて記述します>

1. 20mL の 80 mM CaCl2, 50 mM MgCl2 を加える
2. ピペッティングした懸濁液を50 mL チューブに移す
3. ボルテックスする 30秒~1分程度
4. 氷上に10分放置
5. 3000 rpm, 4℃, 10分で集菌

1, 3, 4, 5の操作をもう一度行う

集菌した沈殿に10mL の 100mL CaCl2 を加え、ボルテックス
10mL の 50% グリセロールを加え、ボルテックス
チューブに適量ずつ分注
直ちに、-80℃に保存

■ 100~150 uL を一つのクローンに対して使用していますが、分注して冷凍保存する量は 0.5~1 mL です。一旦精製したプラスミドを増幅するのであれば、コンピテントセルを数回凍結融解してもまだ使えます。凍結融解による効率の低下が心配であれば、コンピテントセルを1 mL で冷凍し、初回使用時に必要量を除いた残りを100 uL ずつ分注し直して冷凍してください。
■ ボルッテックスをかけ、液体窒素を使用しないで作製するため、最初は本当にできるのか不安でしたが、問題なく使っています。
■ 高い効率のコンピテントセルを得るのであれば、Inoue et al, 1990 をお勧めします。この方法では、菌の増殖と試薬のpH をコントロールできれば良いコンピテントセルを得ることができます。Transformation buffer (TB) の pH を適正なものに合わせるのが難しいのですが、 pH の異なる二つのTB を調製し、それらの比率を変えて混ぜ合わせることで(手間はかかりますが)適切なpH に合ったTB を得ることができます。この様に pH の異なる2本の試薬を準備する方法は、リン酸カルシウム法による動物細胞への遺伝子の導入でも重宝します。(T.Y.)
Inoue H, Nojima H, Okayama H. High efficiency transformation of Escherichia coli with plasmids. Gene 96 (1): 23-28, 1990. PMID: 2265755.

(Mail News 2005.11.30 掲載記事より)



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