RDB_News

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■ 組換えアデノウイルスの取扱いに関する技術研修
■ 理研設立記念日のお知らせ
■ バンク雑記
■ DNAバンクのちょっとした話し
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■■■ 組換えアデノウイルスの取扱に関するテクニカルセミナー ■■■
https://www.brc.riken.jp/lab/dna/ja/adenoja.html
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■ 第78回BRCセミナーとして、組換えアデノウイルス利用の概要を紹介するテクニカルセミナーを企画いたしました。
〔日時〕平成20年10月22日(水)14:30-17:30
〔会場〕理化学研究所筑波研究所 バイオリソース棟1階大会議室
(https://www.brc.riken.jp/inf/access/)
■ このテクニカルセミナーでは、組換えアデノウイルス利用に関係する「遺伝子組換え生物等規制法」の講演と、シャトルベクターから組換えアデノウイルスに変換ならびに組換えアデノウイルスの精製に関する講演を行います。
■ 事前の参加申し込みは不要です。
■ 詳細は下記をご覧下さい。
「組換えアデノウイルス」テクニカルセミナー詳細
https://www.brc.riken.jp/lab/dna/ja/adenoja.html

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■■■ 理研設立記念日のお知らせ ■■■
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■ 10月27日(月)は設立記念日のため業務は終日停止致します。
ご迷惑をおかけ致しますが、ご了承下さい。

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■■■ バンク雑記 ■■■
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■ キンモクセイが匂う季節となりました。秋到来です。室員一同、気持ちを新たに業務に従事してゆく所存です。
■ さて皆様は新年度の科学研究費の申請時期を向かえ書類作製に追われている事と察しております。リソース整備事業従事者しては、やはり今年もリソース基盤整備支援の為の競争的リソース開発研究グラントが皆無であり寂しい思いです。国指導のNBRP事業は技術研究があって初めて基盤が支えられるはずであり、再考して頂ければとも考えます。寄託されたリソースをそのまま提供する事業ではすぐ破綻がきます。常に技術開発研究を共役させてこそ実りのある事業となります。科学論文雑誌の「Cell」では既に数年前より「Resource」という項目でリソース関連の研究論文を掲載しております。 国指導で行なわれてきたNBRPは立派に船出し日本発のリソースが貢献した研究も増加の傾向にあり喜ばしい事です。最近の理論物理学や化学の領域でのノーベル賞の日本人の受賞(日本発は二人ですが)も、うれしい限りです。
■ 次は永続性を保つためにリソースに高付加価値を付与する為の国家支援プロジェクトを科学研究費に盛り込み充実させる必要を感じます。まだまだ一つ間違うと全てが失われる状態のNBRPを永続的な、研究者ひいては国民に還元できる事業として支援研究プロジェクトを設置する事は大切です。本当の科学的意義を理解し「リソース無くしてリサーチ無し」、「リサーチ無くしてリソース無し」を実行する為の最後の留め金を打つ事が、日本が科学立国として世界をリードする証明となる確信します。日本人の根源の一つの「公」の精神で国際社会に貢献できる事を誇りに思いますし、欧米には無い独自性のある国際事業となる事を期待します (K.K.Y)。

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■■■ DNAバンクのちょっとした話し ■■■
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■ PCR で標的の増幅が見られないときに、鋳型DNA 溶液を希釈して使用することで増幅が得られることがあります。以前、ラボマニュアル「PCRの話し (1)」 (https://www.brc.riken.jp/lab/dna/ ja/manual.html) で触れたことがありますが、鋳型DNA の溶液中に入り込んでいる何らかの物質が、PCR 反応を阻害していることが考えられ、溶液の希釈によりその阻害物質の濃度が下がることで阻害が解除されると考えられます。
■ ところで、その阻害物質は何でしょうか?今回、「BRC-JCM保有微生物株由来ゲノムDNA 」 (https://www.brc.riken.jp/lab/dna/en/JCMDNA2en.html) の調製過程でその「これがその正体か?!」という事例に遭遇しましたので、報告します。
■ 遺伝子材料開発室では、微生物材料開発室と共同で30種あまりの微生物DNA を調製し、提供してきました。利用者から新たな菌の追加依頼があり、Mitsuokella multacida (RDB 6653, JCM 2054T) 、Selenomonas ruminantium subsp. lactilytica (RDB 6655, JCM 6582T) とPrevotella albensis (RDB 6677, JCM 12258T) について、これまでと同じようにアルカリ法でDNA の抽出を行いました。
(アルカリ法によるDNA 抽出は下記を参照してください)
■ いつものように提供用に調製したサンプルを10倍希釈し、それを鋳型DNA として1 ul を用いた20 ul の反応系で16S rRNA gene を標的とする真正細菌検査用プライマーを用い、PCR を行いましたが、全くバンドが観察されません。これまで調製してきた30あまりの株では、このように濃い鋳型DNA でPCR による目的バンドの増幅阻害がかかる菌はありませんでした。疑問に思い、Mitsuokella multacida のDNA 抽出過程を思い出してみると、エタノール沈殿操作によって、DNA のほかに結晶様の白い沈殿が観察されていたことに思い当たりました。
■ この白い結晶様の沈殿は、エタノール沈殿の過程で析出し、水に良く溶け、DNA と挙動を共にしています。多糖類ではないかと思い、多糖類の除去に有効であるとされるCTAB [Cety1 Trimethy1 Ammonium Bromide (hexadecyltrimethyl ammonium bromide)] によるDNA 抽出を試みました。
(CTAB によるDNA 抽出は下記を参照してください)
■ その後、通常のアルカリ法で調製したDNA とそれをさらにCTAB 抽出し、多糖類を除く操作をしたDNA を同じ濃度 (300 ng/ul) に調製し、PCR の鋳型としてPCR を行いました。今度は、もとのDNA を10倍に希釈するだけでなく、10の0.5乗倍ずつ段階希釈し、鋳型DNA としてPCR を行いました。PCR 産物を電気泳動により確認したところ、期待に反して両者とも同じ結果となりました。即ち、もとのDNA を10倍に希釈した30 ng/ul の鋳型DNA を1 ul 用いた場合は、増幅されるDNA 断片は観察されず、10の1.5乗倍希釈では薄っすらとしたバンドが、10の2乗倍以上の希釈で良好なバンドを観察できました。
■ 結局、CTAB 抽出によりDNA 溶液から結晶様の白い沈殿を除くことはできたのですが、それによりPCR による増幅が改善されたわけではありませんでした。CTAB 抽出により除去できたものがPCR を阻害しているわけではないことは分かりましたが、何が阻害物質なのかは未だ分かりません。改善のヒントとなる情報をお待ちいたしております (T.M)。

アルカリ法によるDNA 抽出
50 ml コニカルチューブで菌体を8 ml の0.15 M NaCl + 0.1 M EDTA (pH8.0) に懸濁する
1 ml の10 mg/ml lysozyme (in PBS) を加える
37℃水槽で5分間加温する
1 ml の0.5 M Tris-HCl (pH7.5) + 5% (w/v) SDS を加える
25 ul の10 mg/ml proteinase K を加える
60℃水槽で10分間加温する
等量のフェノールによる抽出を2回繰り返す
等量のフェノール/クロロホルムによる抽出を2回繰り返す
等量のクロロホルムによる抽出を1回行う
水相を新しいチューブに移し、2倍量のエタノールを加え、静かに混和する
現れたDNA (白い糸くずの塊状のもの)をプラスチック製エーゼに巻き取り、新しいチューブに移す
エーゼからDNA が離れない場合は、無理にとらずにエーゼの先端をハサミで切る
10 ml の75% エタノールを加え、沈殿をすすぐ
遠心をかけずにエタノールを十分除く
DNA が乾かないうちに1 ml のTE + 10 ug/ml RNaseA を加える
37℃で30分間加温する
5 ul の10 mg/ml proteinase K を加える
37℃で1時間加温する
さらに1 ml のTE バッファーを加える
等量のフェノールによる抽出を1回行う
等量のフェノール/クロロホルムによる抽出を1回行う
等量のクロロホルムによる抽出を1回行う
水相を新しいチューブに移し、2倍量のエタノールを加え、静かに混和する
3,000rpmで5分間遠心分離を行う
1 ml の75% エタノールを加え、沈殿をすすぐ
3,000rpmで5分間遠心分離を行う
エタノールを十分除く
DNA が乾かないうちに1 ml のTE バッファーを加え、十分溶解させる
DNA 濃度を測定し、濃い場合にはさらにTE バッファーを加える

CTAB によるDNA 抽出
TE バッファーに溶解したDNA 溶液600 ul を新しいチューブに取分ける
100 ul の5 M NaCl を加える
80 ul のCTAB/NaCl [10% (w/v) CTAB/0.7 M NaCl] 溶液を加える
65℃水槽で10分間加温する
等量のクロロホルムによる抽出を1回行う
等量のフェノール/クロロホルムによる抽出を1回行う
等量のクロロホルムによる抽出を1回行う
水相を新しいチューブに移し、0.6容のイソプロパノールを加え、静かに混和する
現れたDNA (白い糸くずの塊状のもの)をプラスチック製エーゼに巻き取り、新しいチューブに移す
エーゼからDNA が離れない場合は、無理にとらずにエーゼの先端をハサミで切る
1 ml の75% エタノールを加え、沈殿をすすぐ
3,000rpmで5分間遠心分離を行う
エタノールを十分除く
DNA が乾かないうちに300 ul のTE バッファーを加え、十分溶解させる
DNA 濃度を測定し、濃い場合にはさらにTE バッファーを加える

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発行
理化学研究所・バイオリソースセンター
遺伝子材料開発室
dnabank@brc.riken.jp
https://www.brc.riken.jp/lab/dna/ja/
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2008.10.10



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