RIKEN BioResource Center DNA Bank Mail News (電子メール版)

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RIKEN BioResource Center DNA Bank Mail News (電子メール版)
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個人情報の取扱いについては、下記に詳細がありますので、ぜひ、御一読ください。

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■ 新しいクローンセット、S. pombe ORFeome clones
■ マウス BAC クローンの検索方法
■ ヒト染色体別ゲノムクローンの追加
■ 新しい発現ベクター
■ 研究成果ご報告のお願い
■ バンク雑記
■ DNAバンクのちょっとした話し
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■■■ 新しいクローンセット、S. pombe ORFeome clones ■■■
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■ (独)理化学研究所中央研究所、吉田化学遺伝学研究室からS. pombe コーディング領域4,800 配列を組込んだORFeome clones が寄託されました。論文ならびに理研のプレスリリースでは提供の英語ページを紹介していますが、日本語のページも設置いたしておりますのでご利用下さい。
論文:
Matsuyama et al., 2006, Nature Biotech., Published online: 25 June 2006 | doi:10.1038/nbt1222.
プレスリリース概要:
プレスリリース本文:
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■■■ マウス BAC クローンの検索方法 ■■■
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■ これまで数多くの皆様にご利用頂いていますMSM/Ms mouse BAC クローンの検索が下記サイトから利用可能になりました。キーワードとしてgene (例: Eya2, Myc, F5, F8, Cetn2, Accn1, Atp9a, Ulk2, Bcl11a など) が利用可能です。

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■■■ ヒト染色体別ゲノムクローンの追加 ■■■
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■ 理研GSC より寄託されましたヒト染色体別ゲノムクローンに第9から12染色体のBAC clone が追加になりました。利用可能なクローン名はホームページでご確認下さい。

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■■■ 新しい発現ベクター ■■■
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CMV promoter でドライブし、組込み遺伝子産物にタグを付加できる発現ベクターバ ックボーン (pCMV_tag vector) のページを作成いたしました。テストケースとしてFLAG-tag ベクターに組込んだlacZ ならびにGFP は良好な発現結果を得ています。

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■■■ 研究成果ご報告のお願い ■■■
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>> バンク遺伝子材料を使った発表論文教えて下さい!

■ ナショナルバイオリソースプロジェクト(NBRP)は5年間の最終年度となりました。リソースの充実と提供サービスが継続して行われるためには皆様の>>本事業<<に対するご理解とご支援が不可欠です。

>> そこでユーザーの皆様にお願いがあります。

■ 当バンクはもちろん、理研バイオリソースセンターの運営費用は国の予算により成り立っています。利用者各位が受取っておられる研究助成の成果が発表論文や特許出願で評価されるのと同様、我々バイオリソースセンターの活動も発表論文や特許出 願で評価されます。

>> ただし、我々の論文発表ではなく、提供先、すなわち
>> 皆様がリソースを使って発表された論文や特許出願で
>> 評価されます。是非共ご理解ください!

■ これまでご連絡頂きました成果は下記にて公開しています。
■ 実績をアピールすることなしに、事業継続への道は開けません。評価は文部科学省が下すだけでなく、文部科学省がいかに財務省にアピールして、NBRP を継続性のあるプロ ジェクトとするか、ということも問われます。私達も最善をつくし努力致しますが、皆様のご協力が必要です。

>> 利用者各位が当バンクの遺伝子材料を利用し発表されました
>> 研究論文別刷りをお 送り下さい。

■ また、当バンクから提供させて頂きました材料を用いて特許申請をされ た、あるいは商業化された例がありましたらご連絡下さい。利用者の成果として公開させて頂きます。皆様にぜひご賛同頂き、ご協力頂きますようお願い申し上げます。
■ 送付先
〒305-0074 つくば市高野台 3-1-1
理化学研究所・バイオリソースセンター
遺伝子材料開発室

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■■■ バンク雑記 ■■■
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■ 今月の18日~23日、京都でのIUBMB 国際生化学、分子生物学会に参加しました。バイオリソース事業関連のポスター発表を行い、国内外の研究者にリソース事業の大切さを宣伝しました。NBRP紹介用に用意したパンフレットも2,000部がことごとく売り切れ大変好評でした。しかし一方で、本当にユーザーが寄託や提供に理解を示してくれているかどうかとなると、不安材料が残った学会でもありました。あるユーザーの先生達からは苦言として、国費を使っても研究者に使われもしない研究材料を集めてどうするのとか? バンクからのリソースを使って今迄何か社会に還元できたか? 社会に役立った遺伝子材料を挙げて見よという質問も受けました。理研はお金があるから研究以外のこんな事迄できるのだと? そんなお金があったら地方大学の研究費に投入してほしいとか? 本当に真面目にやっているの? ぶら下がっている大学や研究機関は単なるリソース国家研究予算に集まるハイエナのごときね? 金だけとってすぐに使えない資源しか送ってくれないとか? ホームページを調べても目的の遺伝子がないとか? 多種多様なユーザーの苦言や意見を目の当りにできた大会でした。バンクはやはり使われてなんぼ?の世界です。社会に還元されて初めてその存在を研究者に認識させる事ができるのだと思います。そのための術をなんとか探さなくては?研究者が常に何を狙っているのか?を数年後単位で見据えて対策を練ってゆく姿勢が大切ですね。10年、20年、いや100年経っても私達のバンクにしかない遺伝子資源をそろえてゆく事が大切になってきます。
■ では、私たちは世界で唯一と誇るべきものがあるのでしょうか? 高付加価値のついたものである(1)組換えウイルスバンクと(2)日本人特異的HLAとSEREXセットライブラリー。 あと、これから整備される(3)プロモーターバンクとCre-Zoo Tg マウス作成です。
■ 技術開発についても考えなくては?「使われるバンク」「使われる技術」を目指して何をやるかです。 でも正直いってやっぱり完全長ヒトcDNAクローン化ライブラリーが欲しいですね。国内には存在するのに、自由にバンキング活動に利用できない。色々と付加価値を付けて、皆様に利用できる様にしたいのですが?技術開発同様、この点も早急に解決すべき問題点です。
■ アレー、チップ、イメージング、ケミカル等を駆使して、メタゲノム、Hap マップ、SNP、トランスレーションリサーチ、環境生物学、フードサイエンス、比較生物、進化等の新しい生物医学研究を行う事が最近のはやりですが、同時にこれらの研究分野に応用できる新規ツールやプラットホーム型の遺伝子資源の開発を目指す事も大切です。何か新しい原理に立った新規開発技術を考える必要性を再認識させられた国際学会でした。特徴ある遺伝子資源を整備し、皆様に提供できる体制を作ってゆかなければいけません。とりあえずは、上記三点を重点化してゆきますが、何か新しいアイデアがありましたら御教示願えればと思っております。新しいブレークスルーを考える事によって前述した様々なご批判に対する回答を得る事ができるとも考えております。皆が進んで寄託し、利用できるバンク作りを目指したいと考えております。それが、日本の知的基盤をつくってゆくものだと信じております。 (K.K.Y.)

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■■■ DNAバンクのちょっとした話し ■■■
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■ RIKEN DNA Bankの特徴の一つは、豊富な組換えアデノウイルスの資材、即ち組換えアデノウイルスならびに組換えアデノウイルス作製用シャトルベクターです。組換えウイルスデータベースならびにDNA Bank web catalog を利用して、組換えウイルスの構築のために用いたクローンをたどることも出来ます。組換えアデノウイルスを販売する会社も少しずつ増えてきましたが、RIKEN DNA Bankのように 様々な遺伝子の組換えアデノウイルスとその関連材料を扱っているバンクは他にありません。 (シャトルベクターの参考記事:)
■ RIKEN DNA Bankでは組換えアデノウイルス作製法として、COS-TPC法とクローン化ゲノム導入法を採用しています。
■ 旧来法のCOS-TPC 法は、2種類のDNA を宿主細胞であるHEK293 細胞に導入して組換えアデノウイルスを得ます。ひとつはウイルスゲノムのほぼ全長を持ったコスミドベクターで、E1 領域を欠失しています。もうひとつはEcoT22I (+ClaI) により制限酵素消化した末端タンパク付きAd5-dlx ゲノム (DNA‐TPC)で、E1領域は制限酵素処理で切断されていることが期待されます。この2種類のDNA がHEK293細胞に導入されると、細胞内相同組換えにより目的の発現ユニットを搭載した組換えアデノウイルスが産生されます。ここでの問題点は、DNA-TPC の制限酵素処理が不十分だと、DNA-TPC 由来のウイルス初期遺伝子E1A とE1B を持ったRCA が生成してきてしまうことです。RCA の分離には非常に手間がかかりますし、かりに検出限界以下でも混入していたとしたら2ないし3世代後にはほとんどがRCA positive となってしまい、目的の組換えアデノウイルスを分離することが出来なくなってしまいます。
■ そこで、作業の効率化、簡便化を目的としてウイルス作製にDNA‐TPCを用いる必要のない完全長ウイルスゲノムを持ったitベクター (intact termini vector)が開発されました。このit ベクターにはヒトアデノウイルス5型ゲノムがクローニングされていますが、E1 領域は欠損しています。従って、it (intact termini)ベクター(pAxcwit、pAxCAwtit)を用いた組換えアデノウイルス作製では自律増殖可能なアデノウイルス (RCA; Replication Competent Adenovirus) が出現しにくいということは理論的に考えて当然のことです。仮にRCA が生成するとすれば、ウイルス増殖宿主のHEK293細胞がゲノムに持つE1遺伝子をウイルスが増殖過程で組換えにより獲得する場合です。この現象は極めて低い確率でしか起こらず、細胞の継代回数、ウイルスの継代回数に気をつけていればほとんど起こらないと考えられます。通常、皆様が実験にお使いになるウイルスの継代回数では全く問題がないと思われます。では、本当にそうなのか?データとして発表されていませんので今回改めて検証実験を行いました。
■ 異なるコスミド株からクローン化ゲノム導入法によって作製したGFP 発現アデノウイルス (AxCAEGFPit) 3株について、3rd seedから13th seedまでを6cmディッシュのHEK293細胞にて継代しました。これらのウイルスにRCA が発生しているかを検査しました。作製した組換えウイルスをHeLa 細胞に感染して得たcell pack よりウイルスDNA を抽出しました。E1A ならびにE1B を検出できるよう設計したプライマーセットを用いてPCR によりRCA の検出を試みました。その結果、3株ともに13代まではRCA は検出されませんでした。また、細胞観察でも13代までEGFP の発現は高いレベルに保たれており、安定していました。
(検査手法の参考記事)
(RCA検出結果)
■  今回使用した組換えアデノウイルス作製用it ベクターはコスミドベースのクローンであり、取扱いにコツが必要です。あまり長い時間大腸菌を培養すると発現ユニットが落ちてしまったり、操作中や保存中の状態によってはDNA が切れてしまったりすることもあります。しかし、一度ウイルスになればDNA に変異が入ったものは増えず、RCAも出現確率は非常に低く、目的ウイルスのウイルスの増殖が保たれやすいため、扱いやすいのではないかと思います。 (コスミド取扱いの参考記事: Technical notes 02)
■  当バンクではitベクターやその改良版であるit2ベクターを用いて重要cDNA搭載組換えアデノウイルスを作製し、提供していく予定です。 (M.T. & T.M.)

2006.06.30



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