RIKEN BioResource Center DNA Bank Mail News (電子メール版)

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■ 組換えウイルスSOPの更新
■ バンク雑記
■ DNAバンクのちょっとした話し
■ 論文紹介
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■■■ 組換えウイルスSOPの更新 ■■■
https://www.brc.riken.jp/lab/dna/rvd/sopja.html
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■ 8月に開催いたしました「組換えアデノウイルスの取扱いに関する技術研修」のテキスト「組換えアデノウイルス作製マニュアル~クローン化ゲノム導入法~」をアップロードしました。組換えウイルスSOPのページからダウンロードできます。
■ このテキストでは、pAxit 系ベクターのHEK293 細胞へのトランスフェクションからウイルスの迅速精製法までを取り上げています。

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■■■ バンク雑記 ■■■
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■ 理研BRC が目標にするテーマの一つに「先導性」がある。 「先導性」とは一体何であろうか? 先に立って導く事が語源であるが、理研BRC は研究オリエンテッドの研究所ではないので、まともに研究で勝負はする事は無理である。 唯一BRC が優れている所は整備されたリソース以外に無い。そこで私なりに解釈すると理研BRC での意味合いは「リソースをバックにした研究を意味し、皆にリソースを使わせる研究開発の推進と利用」となる? そしてこの研究開発により少しでもサイエンスに貢献出来ればバンカーとして最高の喜びである。 しかし「生もの」を扱うバンクはこれで良いであろうが、遺伝子リソースの場合 他のバンクとは幾分その性格を異にする。遺伝子の場合は常に民間や国家プロジェクトとの競争があり、これらが目指すリソースは避けなくてはいけない。
■ 「先導性」を考えた場合、次世代リソースをいち早く見極める事が肝要である。予算を念頭に置きつつ何を選定するかが鍵となる。ゲノムプロジェクトの様な大型予算もなく、如何にして理研DNABank の独自性を出すのか? この「回答」が理研DNABank での「先導性」に対する回答である。これは四六時中考えている難問であり、常に私自身この難問に悩まされてきた事も事実である。結局 今まで15年事業を行ってきたが、いつもこれしか頭になかった。長年の経験からは収集のみに頼った事業展開では運営は無理であることは明白であるので「自己開発型バンク」でしか生きる道はない。付加価値も全て自分達でつけリソースを作製するのである。収集に頼った形での遺伝子バンクの運営は不可能である。まず集まらない。集まるのは要らなくなった廃棄寸前の遺伝子材料であり、当然分譲希望はない。
■ さて一般的には「先導性はなにか?」に対する答えは簡単である。我が国で開発された我国独自のリソースに着目し、収集してそれに付加価値を付ければOKである。でも遺伝子の場合はもう少し大変である。競争相手と同じ標品価値しか付与できないと状況は悲惨である。我々独自でしかもこれから流行るものを考案する必要が有る。寝ても覚めても次世代リソースの夢ばかり。次世代遺伝子リソースとは何だろうか? 其のための技術開発とは? 月並みな考えしか思いつかないのが情けない。
■ 我々は日本人である。日本人を規定している遺伝形質は何か? まずはHLA 抗原か? そこで愛知がんセンターの赤塚先生にお願いして、日本人の代表的HLA 抗原遺伝子クローンを一揃え揃える事が出来た(感謝)。 これをどの様に付加価値を付けるかである。各々のCTL 作製は大変なプロジェクトであるし、まずは診断と遺伝子導入であろうと考えそれを実行している。しかし、其のためのグラントが通らない。日本の免疫学者さん何か良いアイデア有れば教えて下さい。 その他 日本人特異的遺伝形質のSEREX クローン群も収集している。これも今後どう発展させて行くかにかかっている。
■ ヒトゲノムも解読され、「将来の遺伝子医療」を見据えて組換えウイルスバンクを創設した。このプロジェクトは当時 科学技術庁の振興調整費によって支えられ、そのバンク基盤を整える事ができた。特に札幌医科大学の濱田先生の御力添えなしには今日のバンクはあり得えなかったと思う(感謝)。このバンクは世界でも一つしか無いユニークなものです。 しかしこのバンクも幾つかの問題を抱えており、今後の技術開発に期待しなくてはいけない。まずウイルス作製に時間とお金がかかる。そこでウイルスベクター作成のハイスループット化、変異体の作成を極力抑える技術、多種ウイルスベクターへの変換を容易にするプラットホーム型ベクターの開発、将来的には、静脈注射でも標的化可能なベクター開発等の技術改革が必要である。今は遺伝子の生化学反応のセット化を目指し置換可能なウイルスベクターの開発を考えている。 しかしこれで「先導的」にすすめる事が可能になるのか? どれも人員と予算次第かな? 日本の現状ではウイルスを扱える人材不足も悩みの種?
■ あとはマウスと遺伝子に関する業務プロジェクト。遺伝子プロモーターに着目しプロモーターバンクを立ち上げている。各種レポーターや、CRE マウス作製のプロジェクトを初めている。 人工プロモーターの開発も先導的開発事業としては大切でしょうか?
■ あとはNoncoding RNA ですか? 細菌,微生物のDNA ですか? 一細胞系譜のDNAシリーズ, ライブラリーですか? ムムムム???
■ 近年では新しい技術開発やブレークスルーにより、直ぐ現在の遺伝子リソースは廃れてしまう。其のためにも常に次世代リソースを念頭に、「先導的バンク」を考えてゆく必要がある。リソース情報の公開と整備も極めて大切です。本当にこれ大切です。アノテーションされていないから最終遺伝子に到達できない。この部門なしに、遺伝子リソースの開発そしてバンキング事業はあり得ない! 自動変異検出技術、診断用遺伝子セット、正負の遺伝子導入系、その他?
■ 遺伝子リソースは「生もの」でないから、「生もの」で勝負した方が良いのなら 遺伝子バンクはウイルスバンクと蛋白バンクで勝負しますか?
■ でも100年先の遺伝子リソースも考えなくては? ヒトの理解と人類の幸福のための遺伝子リソースを!  其のための先導性でしょうか!  終わりの無い永遠の旅!!! 常に「先導的リソース」を開発する姿勢を持ち続け努力することが研究者からの「信頼」を得る結果となり事業の「継続」につながる。
■ 研究者が使用する遺伝子バンクとなる事を目指して。(KKY)

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■■■ DNAバンクのちょっとした話し ■■■
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■ 今回は、お休みを頂きます。
■ 皆様の実験でお困りのことがありましたらご連絡下さい。もしかしたら、我々もかつて困っていたことかもしれません。(T.M.)

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■■■ 論文紹介 ■■■
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■ Sakamoto K et al., Distinct roles of EGF repeats for the Notch signaling system. Exp. Cell Res.302, 281-291 (2005).
Notch はsingle-pass 膜貫通型受容体であり、様々な生物の発生過程で細胞運命の選択に関与している。Notch シグナルは転写活性化因子として働き、蛋白質分解により細胞膜から遊離する細胞内ドメインにより伝えられる。この一連の過程は、Notch とそのリガンドであるDSL (Delta, Serrate, Lag-2) との間で、細胞外ドメインにあるEGF リピートを介した細胞間相互作用により開始されるが、詳細な機序は未解明である。この報告では、Notch1 がEGF モチーフによりホモ二量体を形成しうることを報告している。このNotch1 の二量体形成はリガンドの存在により増加し、HES1 プロモーターを活性化したことから、Notch1 の二量体形成がNotch シグナル伝達の重要な初期反応であることを示唆している。EGF モチーフは、TNF-alpha converting 酵素等の蛋白質分解酵素からの保護(すなわちNotch1 のリガンド非依存的活性化を阻害)に役立っている。恒常活性化の防止、リガンド相互の相互作用やホモ二量体化による側方相互作用などの Notch のEGF モチーフの多彩な機能は、Notch シグナルシステムの重要な要素を担っていることは明らかである。 (T.M.)
■ 利用した遺伝子材料
pCMX-N/RBP-J (RDB 3021)
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発行
理化学研究所・バイオリソースセンター
遺伝子材料開発室
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2005.10.28



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