RIKEN BioResource Center DNA Bank Mail News (電子メール版)

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RIKEN BioResource Center DNA Bank Mail News (電子メール版)
https://www.brc.riken.jp/lab/dna/ja/news/news.html
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■ FAQのページ 「遺伝子組換え実験に関して」を更新しました
■ バンク雑記
■ DNAバンクのちょっとした話し
■ 論文紹介
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■■■ FAQのページ 「遺伝子組換え実験に関して」を更新しました  ■■■
https://www.brc.riken.jp/lab/dna/ja/FAQ.html
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■ これまでバンクの提供業務でしばしば寄せられた質問から、「遺伝子組換え実験」に関する次のような誤解を取り上げました。
「PCRのテンプレートに使うだけなら(バンクに提供依頼をする時に)遺伝子組換え実験承認書の写しは必要ない」という誤解
「マウスに組換えアデノウイルスで遺伝子を導入するときの拡散防止措置はP1Aでよい」という誤解
「培養細胞に組換えアデノウイルスで遺伝子導入する実験は遺伝子組換え実験ではない」という誤解
「マウスにヒトの遺伝子を導入する実験は、全てP1Aレベルの実験でよい」という誤解
「マウスにヒトの遺伝子を導入する実験は、全て機関実験でよい」という誤解

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■■■ バンク雑記 ■■■
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>>バンク事業は3年、5年のプロジェクトではなく100年先を見据えて!!<<
■ 人類が直面している最大の課題のひとつである健康問題、食料問題、そして環境問題を解決すべく、国家プロジェクトと銘打ってゲノムやタンパクを始めとする数々のライフサイエンス研究が国の重要施策としてあげらています。又、「期待」も大変大きいわけですが、このライフサイエンス研究を根底から支え、推進させるためには、人材と設備に加えて、研究材料(リソース)の確保とその品質管理が必須である事は明白です。又、最近では、ライフサイエンス研究の成果が産業化と直接結びつく事も多くあり、リソースに係わる知的所有権をめぐって先進国のみならず途上国も主張するようになってきました。
■ このような状況下、我が国の科学研究と産業を推進するための知的基盤として我が国のバイオリソースを整備することが国策として極めて大切であることが認識されはじめてきました。しかしながら一方では国家プロジェクトとして従来の3年や5年単位のプロジェクト同様に、このバイオリソースプロジェクトをたち上げ、設定することで、本プロジェクトを終わらしたと考える人達も少なからずおります。彼等の誤った認識は成果を3年、5年後に問うという従来の科学研究推進プロジェクトと同一視している点であります。我国のこれからのライフサイエンス研究を支える知的基盤整備事業が5年や10年でよいのでしょうか?10年、20年後、我国を「科学立国」として支えてゆくには、この知的基盤事業をより充実させる事が先決であり、そのための「100年後を見据えた」投資であるべきです。現在、莫大な国民の税金を使って生まれた大型プロジェクトの成果やリソース、さらには科学研究費から生みだされた成果やリソースがそのまま破棄され、時には他国にそのまま持っていかれて知的所有権も主張できない様な現在の状況は大変危惧すべきではないでしょうか?
■ 我国で生まれた「成果」や「リソース」や「情報」は、我国に有るか還元されるべきです。リソースに関する品質管理、収集、保存、提供にかかわる知的基盤整備に関しては、私共、理研BRC は、国内および海外の研究コミュニティーから世界でも有数のリソースセンターとして認識されるようになってきております。又、当センターが保有するリソースに係る高度技術を国内外に普及させるための研修事業や若手の将来を担う「バンカー」の教育も行っております。これらの「火」を消すことなく、又、「科学立国」としての日本を100年、200年と支えるためにもこのバンク事業を継続させてゆかねばならないと考えております。
■ 100年後の我国のライフサイエンスを支える知的基盤整備事業として、これからも尊敬と賞賛に値するセンターとなるべく最大の努力をしつづける覚悟でおります。
>>知的基盤整備は100年先を見据えて、三代まで種を播く ― 『播かぬ種は生えぬ』<<
(KKY)

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■■■ DNAバンクのちょっとした話し ■■■
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■ コスミドクローンの取扱いは熟練した技術が必要? しかし、いくつかの注意点を知れば、プラスミドと同じように扱うことができます。今回はそのお話をします。
■ コスミドで形質転換した大腸菌は、LB プレートでもLB 液体培地でも増やすことができます。LB 液体培地で増やした形質転換大腸菌からコスミドを調製するには、プラスミド調製用のアルカリ法を利用して、全く同じ試薬と同じ手順で – 若干の留意点を除けば- 問題有りません。
プラスミドの場合、アルカリ法のSolution I, II, III と処理し、エタノール沈澱と75% エタノールによる沈澱の洗浄の後、沈澱を滅菌水かTE バッファーに溶かし、そのまま制限酵素処理や塩基配列解析に用いても問題ない場合が多いのですが、コスミドの場合は、このようなショートカットはできないことが多いようです。フェノール抽出によるDNA の精製は必要です。また、沈澱を乾燥し過ぎると、再び滅菌水に溶解するのは困難になりますので、遠心後の上清をピペットチップ等で丁寧に除き、どうしても壁面に残る滴はろ紙かティッシュペーパー等のこよりで吸い取って、沈澱が湿っているうちに溶解して下さい。もし、乾燥し過ぎてしまったら?溶かそうとして激しく撹拌や震盪をしますと、DNA が長いだけに物理的損傷が心配です。解けにくくなった場合は、37 ℃に保温して、ゆっくり溶かして下さい。
■ コスミドで形質転換した大腸菌を長く継代していると、コスミドの欠失や大腸菌からの脱落が起きやすくなります。そこで、コスミドは形質転換した大腸菌をグリセロールストックで保存するよりは、DNA で保存し、必要な時に大腸菌を形質転換することをお勧めします。コスミドによる大腸菌の形質転換にはコスミドのパッケージングエキストラクトが必要になります。
プラスミドもそうですが、コスミドの場合は特にクローンの増殖のための培養時間が長くなり過ぎ無いように注意が必要です。培養開始時の植菌量が少ないと、どうしても液体培養の時間が長くなり、コスミドが脱落する傾向があります。同様に、数百ml の培養をする際の前培養が長くなると、本培養で菌が十分増えていてもコスミドの収量がとても少なくなる傾向があります。多少菌の増殖が悪くても、前培養も本培養も6-8時間程度にした方が無難です。
■ 当バンクから組換えアデノウイルス作製用シャトルベクターの提供を受けた方からのクレームで比較的多いのは、
「クローンを確認するためにマップを見て制限酵素で切ったが期待されるインサートサイズのバンドがない。遺伝子が抜け落ちたのではないか?」
というものです。当バンクで扱っている組換えアデノウイルス作製用シャトルベクターは40 kbp 前後有り、そこに各種遺伝子のcDNA が搭載されています。そこで、プラスミドと同じような感覚で100 ng 程度を制限酵素で切り挿入されたcDNA 断片をアガロースゲル電気泳動で検出しようとしても、例えば1 kbp のインサートであれば2.5 ng しか有りませんので、バンドがとても見えにくいのです。そのことを考慮して、インサートを確かめるには多めのDNA を使って下さい。(T.M.)

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■■■ 論文紹介 ■■■
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■ Fukuda K et al., E1A, E1B Double-restricted Adenovirus for Oncolytic Gene Therapy of Gallbladder Cancer. Cancer Res. 63: 4434-4440 (2003).
■ 進行胆嚢癌は最も予後不良な癌種のひとつであるため,遺伝子治療などの新規の治療法が必要とされており,更なる研究が望まれている。近年,E1B-55kD欠損または変異E1Aをもつ腫瘍制限増殖型組換えアデノウイルスを用いることにより,有効な治療効果が得られることが報告されている。腫瘍制限増殖型アデノウイルスの安全性をさらに高めるためE1領域に二重の変異(変異E1A及びE1B-55kD欠損)をもつアデノウイルス(AxdAdB-3)を作製し,胆嚢癌に対する治療効果と正常ヒト細胞における安全性について検討した。AxdAdB-3の胆嚢癌細胞と正常細胞における増殖率と細胞傷害性を5型野生型アデノウイルス及びAxE1AdB(E1B-55kD欠損 アデノウイルス)と比較した。また,in vivoでの治療効果は,ヌードマウスの胆嚢癌皮下移植モデル及び胆嚢癌腹膜播種モデルにおいて検討した。In vitroでAxdAdB-3は胆嚢癌細胞(TGBC-44TKB, Mz-ChA-2)において5型野生型アデノウイルスやAxE1AdBと同程度に効率的に増殖し,腫瘍融解をきたした。対照的に小腸上皮細胞,微小血管内皮細胞や肝細胞などの正常初代培養細胞ではAxdAdB-3の増殖は胆嚢癌細胞と比較して抑制され,5型野生型アデノウイルスと異なり細胞傷害も軽微であった。さらに,AxE1AdBとの比較においても正常細胞に対する細胞傷害は軽微であった。In vivoにおいては,胆嚢癌(TGBC-44TKB)皮下移植モデルでAxdAdB-3は腫瘍の増殖を有意に抑制する結果が得られた。(P < 0.01) また,胆嚢癌(TGBC-44TKB)腹膜播種モデルにおいても腫瘍選択的な増殖,腫瘍融解を示し,生存期間を有意に延長した。(P < 0.05) これらの結果からE1二重変異アデノウイルスは胆嚢癌細胞においてin vitro, in vivoで効果的かつ選択的に増殖,腫瘍融解をおこすと同時に正常細胞に対するnegativeな作用を軽減することが示された。E1二重変異アデノウイルスは,今後の胆嚢癌の遺伝子治療において有用な治療法であると思われる。(R.K.)
■ 利用した遺伝子材料
Ax1w1 (RDB 1746)
AxE1AdB (RDB 2048)
AxdAdB-3 (RDB 2176)
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発行
理化学研究所・バイオリソースセンター
遺伝子材料開発室
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2005.08.30



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